42人が本棚に入れています
本棚に追加
「まだ確証はないんだけどね。多分間違いないと思う」
涙ぐむ瞳で落ち込む志穂に、由紀は容赦なく質問攻めを開始した。
「ねえねえ、相手は?若いの?えぇっーまさかダブル不倫!?」
頭の中のあらゆる妄想が膨らみ、アルコールがそれに拍車をかけ出す。
由紀は嬉しそうだった。
自分よりも幸せに先を越して結婚したものの、家庭が崩壊してゆく様を
勝ち誇ったかの様に楽しんでいる風にも見えた。
「それ、絶対にやってるよ!早く別れなよ!」
事情も聞かぬまま、心無い言葉の発言に流石に止めようとした時、
背中から見覚えのない女性が割り込んできた。
「もうその辺にしたら、見苦しいわね」
「えっ」
その彼女が、涼子だった。
ご主人の仕事の関係で海外生活が長く、同窓会で会うのは初めてだった。
誰よりも若々しく凛とした振舞に大人の女性の品格を漂わせている姿に、
始めは気が付かない程、綺麗な印象だった。
学生の頃はよく、志穂と3人でお弁当を食べたものだ。
その記憶が蘇り、今日涼子の提案でランチを約束していたのだ。
駐車場からヒールの音を立てながら涼子が近づいて来た。
その後ろには、先程地味に感じていた女性の姿が――
それは、志穂だった。
離婚に悩む関係で、気晴らしに同窓会に参加したものの
不快な思いを感じたのか、ランチの誘いも断って帰っていたが、
涼子が自宅マンションまで迎えに行き強引に連れ出してきた様子だった。
最初のコメントを投稿しよう!