Monday

8/13

42人が本棚に入れています
本棚に追加
/136ページ
 そして、涼子は一枚のチケットをポーチから取り出した。 「このチケットのために日本に来たの」 金色に煌びやかに輝くチケットには、 シルバーの文字で、マダムコレクションと書かれている。 初めて目にするチケットに、二人は釘付けになっていた。 「一体、それは何?」 「女が綺麗でいられる一番の方法教えてあげるわ。 それは、トキメキを掴みとる事――」  確かに涼子の言う、トキメク事の大切さは十分わかる。 でも、そんな単純な言葉にさえ、言い返す言葉を失っていた。 何故なら、涼子の思うトキメキとは次元の違うものに感じたからだ。 「あなた達、さっきデザートとコーヒーを運んできたウエイターに 色目使ったでしょ?」 「……」 「いや、あの、素敵な若い男性だなぁとは感じたけど、 色目なんてね。志穂ちゃん。」 志穂は少し顔を赤らめ静かに頷いた。 「う、うん」 「そう」 「それじゃ、このチケットの力を見せてあげるわ」 涼子はそう呟くと、テーブルにあるベルを静かに鳴らし、 先程のウエイターを呼びつけた。  制服に身をまとい背筋を真っすぐに伸ばし、 細身の背の高い甘いマスクのウエイターが静かに近づいて来た。 女性なら誰もが見惚れてしまうほどの、 不思議な色気のある若い男性だった。 「お呼びでしょうか?」 涼子の少し手前に近づくと跪く様に視線を低くし 全てを服従したように、ただ一点、 彼女の瞳だけを見つめていた。 「このチケットを利用するわ。 そして―― 今日は、貴方を指名する」 そう告げると、涼子は突然二人の目の前で、 跪くウエイターの唇を強引に奪い、長く熱いキスを交わしていた。 「ええっ!」  二人は目の前の事態を理解できずに、ただ息を殺すように キスを交わす二人を見つめていた。 そして、飲み込む唾の音だけが耳に響いていた。
/136ページ

最初のコメントを投稿しよう!

42人が本棚に入れています
本棚に追加