Monday

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やがて絡み合う唇をゆっくりと離し、 満足げに涼子は二人を見つめ、 想定外の言葉を口にした。 「覚悟はいいわね」 「えっ」 意味が理解できず、聞き返す間もなく、 涼子はウエイターに新たな注文を促した。 それは―― チケットの利用に際し、追加して利用できる特典として記載されていた メンバー追加の約款に対する申し出だったのだ。 「お一人様、二百万円となります」 「えっ!?に、にっ、二百万!?」 そう告げるウエイターの言葉に躊躇うことなく涼子は書類にサインし、 カードを差し出した。 「ちょ、ちょっとまって涼子! これっていったい?」 そんな言葉に耳を傾けることなくウエイターは静かに姿を消し、 その姿を見送ると、涼子は静かに口を開いた。 「貴方たちにお礼をしたいの」 「お礼?」 「そう、学生時代のね」  涼子は高校2年の時に地方から引っ越しをし転学してきた存在だった。 制服の仕立てが間に合わず、始めは前校の地味な制服に身を包み、 地方の方言が会話に出てしまうせいか、クラスの仲間から馬鹿にされ イジメの標的となっていた。  その時声をかけ救ってくれたのが、志穂と夏美の二人だったのだ。 ゴミ箱に捨てられた下駄箱の上履きを、必死に探して見つけてくれたのは夏美。 そして、3人でお弁当を食べようと誘ってくれたのは志穂だった。 「あの頃、貴方たちがいなかったら、今の私はここにはいないの。 だからお願い、実行するかしないかは全てあなた達次第なの、 誰も苦しめず、悲しませず、女性としての魅力を最大限に引き出せる魔法なの。  それに、もう後戻りできないわ。もう、サインは済ませたから――」 「私がこのチケットを使うのはこれで2回目。 世界中のお金持ちが綺麗でいられる秘密がわかる? エステや美容整形なら簡単に誰でもできるわ。 その更に上をゆくものがこのチケット、マダムコレクション。 そう、貴方たちはもう立派なマダムの仲間入りなの。 一週間後、日曜日にまた会いましょう。 後は、貴方たち次第よ」 そう告げると、涼子は一人先に席を立ち店を後にした。  呆然と椅子に腰かけたままの、志穂と夏美は突然訪れた事態に 困惑していた。 「マダムコレクション?」 「一体なんなのよ??」
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