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「さぁ、続いてはお待たせいたしました。
今夜、いよいよボクシング、スーパーミドル級王座の防衛戦、
山神翔選手なんと今回勝てば14回防衛達成の日本新記録ですよ!」
テレビに映る上半身裸の男は鍛え抜かれた引き締まる無駄のない筋肉に鋭い眼差し。
危険な香りを感じさせる若い男だった。
「こいつ凄いんだぜ。これまで13回防衛してるんだけど、全試合1ラウンドのKO勝ちなんだ。凄すぎるよ。今夜21時から生中継だから、それまでに帰るから一緒に見よう」
「うん。わかった」
上機嫌のまま主人を玄関先まで見送ると、夏美は慌てた様子で夕食の仕込みにかかった。
手際よく、ひき肉と卵を混ぜ合わせこねくり回す。
午前8時過ぎには、手ごねハンバーグの仕込みは終了し後は夜に焼くだけだった。
男が浮気を隠すためあれこれと裏工作するように、主婦は主婦の目線で悟られない様に
手の込んだ裏工作を始めている自分に微かな罪悪感があるものの、それ以上に夏美の冒険心は抑えられないものになっていた。
そして待ちわびたその瞬間が訪れた。
瀬名君が所属するアイドルグループのメロディーが鳴り響く携帯を手にし、
聞き覚えのある声に笑顔がこぼれる。
「朝倉だ――」
「夏美様、おはようございます」
挨拶はそこそこに、夏美は本題に取り掛かる。
今日の指名は――。
火照った体を解放させたい……。
今朝、眼にした引き締められた野蛮さを感じる鍛え抜かれた肉体。
今の私の身体を満足させるのは、野性的な本能を醸し出す程の、
男じゃないと無理――。
壊れるぐらいに……。
「かしこまりました。山神翔選手ですね。
手配出来次第ご連絡差し上げます。では――」
朝倉の力は想像を超えていた。
10分後には手配済みの連絡が入り、一目を避けるように
公共施設の地下駐車場がお迎えの場所に指定された。
「今日13時から17時の4時間。山神翔とベッドを共にする――」
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