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朝倉は、涼子様の友人についてマダムサチヨへ報告を始めた。
「夏美様は、先日早速お一人の男性と対面しており 本日も山神翔と申すプロボクサーとセッティング済みとなります。」
マダムサチヨは静かに頷いていた。
「そしてもう一方、志穂様なのですが――」
「そのお方――何か問題でも?」
「それが……
不思議な事に、まだ誰もご指名を――」
「まぁ」
マダムサチヨが驚くことも無理も無かった。
これまで何十年もの間マダムコレクションのチケットを使った女性たちにおいて、
男を指名しない女など、誰一人としていなかったからだ。
「男性とは違った、女性の志向かと思いそれとなく提案はしたのですが、
もう少し時間を欲しいと――」
限られた一週間だとお伝えしていることに対し、志穂は指名をすることはなかった。
これまで、紹介客などに深い興味を示すことが無かったマダムサチヨは、
適宜進捗を報告するように、朝倉に伝えていた。
「世の中に存在するマダムコレクションのチケットは残り2枚だけなの、
その内の一枚を所有し使用した涼子様とご友人、決して心残りの無いように
しっかりと頼みましたよ朝倉」
「はい。心得ております」
そしてマダムサチヨは、孫娘に関する依頼を朝倉に託し姿を消した。
その依頼とは、空港にお迎えに向かう途中に出逢った男の事らしく、
事故で両親を失った以来、微笑みを返すことを忘れたお嬢様が、
微かにほほ笑みを浮かべさせた男の事だった。
少ない情報の中、自らの力を試されることに朝倉は生きがいを感じていた。
「必ず見つけますよ――」
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