Wednesday

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「もしもし、夏美?涼子よ」 「あっ、涼子。びっくりした、確か日曜日って――」 「ああ、そうね。それより今日のお相手は確定してるの?」 「いっ、今、朝倉さんにお願いしたところなの」  暫く会話を交わすと、涼子のお相手は夜の時間らしく、 それまでの時間つぶしにショッピングの誘いだった。  今回ばかりは朝倉もすぐには手配できないと感じた夏美は、 涼子との時間を過ごすことにした。  二人を乗せた真っ赤な高級車が到着した場所は、高級ブランド店が立ち並ぶ 一角の看板の無い店だった。 「涼子、このお店、休みなんじゃない?」 「ふふっ」 口元に優しい微笑みを浮かべた彼女は何も語らず入口へと歩いてゆく。 自動ドアが開き、一歩店内に足を踏み入れた夏美は言葉を失った。 「……」  広い店内の奥まで、真っすぐに真っ赤なレッドカーペットが引かれ、 両脇には従業員だろうか? 20名ほどのブランドスーツを着こなしたスタイルのいい足の綺麗な若い女性たちが、 少しお辞儀をするように頭を下げ、目の前を通りすぎる涼子に言葉をかける。 「いらっしゃいませ。涼子様、お待ちしておりました」  この店は何の店なのか、訳も分からないまま夏美は後を追い歩くしかなかった。 そして、一番奥の特別個室と書かれた天使のエンブレムが飾られた扉へと案内された。 「特別個室?」  個室ならせいぜい6畳間程のスペースを想像していた夏美は再び驚くことになる。 一歩踏み入れた室内は、もはや個室ではない――。 ちょっとした披露宴を行うことが出来そうな広々とした空間。 その中央には、パリコレでもするのか一直線のステージが設けられている。  フカフカとしたソファに腰掛けると、一人の若い男性がコーヒー豆を持参し おすすめの銘柄をいくつか説明する。  すぐ傍で挽かれる香ばしいコーヒー豆の匂いが心地よく、彼がブレンドした特製の コーヒーが仕上がり一口飲みほした時、室内の照明が薄暗くそして静かに音楽が流れ始めた。 「まさか――」
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