ターゲット

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 やがて車は走り出し、男の指示された通りの道を進むと 陸橋の下に車と人影が見えた。 「ハイエナ?」 「検問かーー獲物を狙うハイエナか」 「ピピーィ ピピィー!」 笛を鳴らしながら、誘導する警察官の指示に従う。 「こんばんは、ドライバーさんお急ぎのところごめんなさいね。 ご協力ください」 丁寧に対応する警察官の後ろには、3台ほどハザードを点滅させながら、 対応を受けている。 「飲酒検問ですか?」 「はい。少し息吐いていただけますか。 ハイ!OKです。」 「あんなに飲酒されてるんですか?」 「あぁ、あれね。そこの一旦停止違反ですよ。 貴方はちゃんと停止されてましたからね。」 差し出した金に見向きもしなかった男に対し、いい気をしなかった運転手だったが、 男の忠告に耳を傾けたおかげで、無駄な時間を掛けずに済んでいた。  機転の利く先程の男の事を気にした様子の女性に対し、運転手は静かに伝えた。 「録画してますので、改めて調査します」 返事を返すことは無かったが、男の機転以外に女性の様子が少しおかしい事を ミラー越しに感じ取っていた。 「先輩!」 警官とのやり取りの際、若い警官が大声で近づいて来た。 「どうした!」 「1km程南で、人身事故らしくて応援要請です。 道路の真ん中で人が引かれて、後続車も含め4台乗り上げたらしいです」 「酔っ払いか?もうダメだろそいつ」 「何でも、散らばったお金を拾ってたみたいで――」 「金?わかったすぐ向かう」 「運転手さん雨で視界悪いので、ご安全に。ご協力ありがとうございました」  走り出す一台のパトカーを見送ると、車は空港へ向かい再び走り始めた。 「天罰――     下りましたね」
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