Tuesday

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Tuesday

 絡み合う唇、彼の腕の中で身をゆだね肌が触れ合うたびに胸先が敏感に反応する――。 裸体を絡めあいながら、お互いの体温を感じ取りさらに熱をます、 彼の指先が下腹部へと近づくにつれ無意識に――。 「ビクンッ」 「瀬名君……」 「ピピッ、ピピッ、ピピッ、ピピッ」 携帯のアラーム音が鳴り響くとき、夏美は目を覚ました。 昨日のホテルの一件で、興奮のあまり深夜まで寝付くことができずにいたが、 いつの間にか眠りにつき夢の中で、成しえなかったアイドル瀬名との肉体関係を 堪能していた。 「あっ……」  これまで平凡に重ねていただけの日々に、 極端な刺激があったせいなのか、夏美の身体に変化が現れ始めていた。 隣のベットでまだ眠る主人の横を静かに移動し、 夏美は洗面所で下着を履き替え、鏡に映る自らの姿を見ていた。 「夢で……いくなんて」  気を紛らわすように、夏美はキッチンで調理を始めた。 ほろ苦く、コク深い味わいを感じさせるようにリビングにはコーヒーの 薫りが広がっていた。 「おはよう」 「あっ、あなた、おはよう」 夫以外の男性との密会の罪悪感を払拭させるかのように、 食卓には、サラダ、スクランブルエッグ、ボイルウインナー、フルーツヨーグルト等、 まるでホテルのモーニングバイキングの様に料理が並べられていた。 「おいおい、どうしたんだ?」  椅子に腰かけ、いつもは朝のテレビニュースに釘付けの主人は異変を感じ取っていた。 普段、半分焦げたトーストにジャムが無造作に置かれただけの食卓との、 あからさまな違いに義男は気味悪がっていた。 「お祝いよ、だって大きな契約取れそうなんでしょ。 頑張ってもらわないと――」 「おお!そうか」  男は単純だ。心の中で、申し訳ない気持ちが半分あるももの、この時夏美の心の中では 今日の男の指名で一杯だった。  子供の様に朝から無邪気にご馳走を頬張る義男があるニュースに興奮しだした。 それは、スポーツコーナーの一幕だった。  
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