Wednesday

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Wednesday

  主人を見送り、一人寝室で買ったばかりの下着を選ぶ夏美の姿があった。 「やっぱり、今日はこれにしよう!」 スカイブルーの爽やかな色合いにレースが織り込まれた上下お揃いのランジェリーを手にし、着替え始めた。  普段誰にも見せることの無い下着姿、 ヨレヨレの下着を身に着けた自分の恥ずかしさを 心から悔やんでいた。 あの時涼子に言われた一言が突き刺さる様に思い出し、忘れられない……。 「あなた達、今ここで下着姿になれる?」 「……」  限られた主人の収入の中で、主婦として精一杯の努力をしてきた。 そのおかげで、子供も大学まで進学でき今も半年間の海外留学をさせてあげられている。 玉の輿で何不自由なく生活している涼子とは違うのと、 上下の異なる着古した下着を脱ぎ捨て、 真新しい鏡に映る下着姿を見上げると 夏美は一言放った。 「男を自由に操り、どんな男もひれ伏す……わたしは、最強のマダムよ――」  昨日のプロボクサー山神翔との秘め事により残る体の薄いあざを撫でながら、 微笑みを浮かべる夏美の元に呼び出しのベルが鳴った。 「おはようございます。夏美様」 「おはよう」 「早速だけど朝倉さん。あなたどんな男も用意できるのね」 「はい。勿論、ご要望がございましたら死人の男骨までご用意いたします」 「そう。それじゃあ、今日の相手は――」 「……」 「かしこまりました。 ただし…… 今回は少々お時間が必要かと―― 手配が整い次第、改めてご連絡差し上げます」 主人の義男は毎週水曜日に決まって接待で帰宅はいつも遅い。 「今夜、主人は接待の様だから、どうせ終電。時間ならあるわ」 「分かりました。必ず、探し出します」 「よろしくね」  朝倉の電話のやり取りを見ていたかの様に、携帯を置くと同時に再び呼び出しのメロディーが鳴り出した。 それは、嫉妬心を抱きつつも 夢のようなマダムコレクションに参加させてくれた涼子からだった。
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