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産んだあとはすぐには動かせないので、そのまま分娩室で放置されていたのだが。
ちょうど他に産む人が居なかったらしく、分娩室周辺は、人の気配もなく、しんとしていて、怖かったのだ。
そんなことよりって、と脇田が笑う。
「うちは姉が記念日にうるさくて、義兄さんが困ってるんだけど、此処んちは逆だね」
まだ赤黒いような子供を覗き込んで脇田が微笑む。
「どっちに似てるかな?」
「お前だろう」
「渚さんですよ」
「……統吉爺さんにそっくりだ」
誰もが思っていて口に出さなかったことを港が言う。
気配を感じて、港は逃げようとした。
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