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「だってもう、自分にご褒美しなくて良くなったから。
自立するって家を出たけど、やっぱり、誰も居ない家に帰るの、寂しかったんです。
帰っても、友江さんも居ない、未来も居ない。
たまに見かける親も居ない」
そう言うと、
「たまにか……」
と渚が苦笑いした。
自分もそんな親になるかもな、と思っているのかもしれないと思った。
でも、例え、毎日顔をあわせられなくても、きっと愛情は伝わっている。
自分が大人になった今、そう感じているから。
そんなことを考えながら、腕の中の子どもを見下ろし、蓮は言った。
「ボロボロに疲れて帰るのに、なにも楽しみがないのが寂しかったから、毎日、アイスを買って帰ってたんです。
でも、今はそんなこと考えなくていい。
だから、買いに行かなくなったんです――」
と蓮は渚を見つめた。
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