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「では次はウラン山脈から左翼を出撃させましょう。」
筋骨隆々の男はそう言い放つと長机の上に置かれた地形図に乗る四角形の木の駒を移動させた。
「それは違う。」
俺はそう言うと、今移動させたばかりの駒を手に取った。
「左翼を出撃させる時、最も考えなければならないのは敵国バロンコークの協定国ガロニアだ。山脈は一見良いように見えるがガロニアから近い。もしガロニアに応援要請がいっていたらそれこそ自滅しにいくようなものだろう。」
向かい側に座る指揮官達の顔を見やる。
先ほど発言した男は虚をつかれたような顔をし、隣に座る髭を伸ばした老人は頷いていた。
「そのことを考えると一番妥当なのは」
そこで俺は地形図外に置いてあった駒を手に取る。
「二手に別れ、正面班とボイズ山脈に添って遠回りする班に分けます。分ける比は5:1です。」
駒を素早い動きで並べる。
「そこで右翼とも合流します。要するに時間を稼ぐ。本命は分けた小隊。小隊に敵国の首を取らせます。」
敵国の後ろに置いた駒を敵国に近づかせる。
「どうでしょう。」
しん、と静まりかえった周りを見る。長机を囲んだ戦争のエリート達は年齢も様々だ。
皆、思慮深い顔つきをしている。
「確かに、戦況は我が国が苦しい。」
静まる中、一番出入り口から遠くに座る、この場で最も権力の持った男__俺の父が口を開いた。
「それを打破するため、小隊長ロイの案を採用しよう。」
「ありがとうございます。」
俺は素早く敬礼した。
今にもにやけそうになるのを必死で抑える。
まだこの時でない__
だが、着々と準備は進んでいる。
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