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久しぶりに入ったその部屋は殺風景だった。
本と紙とインクの臭いしかしない。
すべてを拒絶するようなこの部屋は人に興味の無いグロンディヌスの心そのもののようだった。
「王よ。このロイはオメガという事実を隠していました。どう処罰なさいますか。」
シンは俺の手首を持つ力を緩めず、王を真っ直ぐ見た。
「三日間謹慎で良いだろう。」
「は?」
「謹慎だ。」
グロンディヌスはどうでもよさそうに手元の資料を見ながら口だけを動かした。
これは予想していた通りだった。
スパイなわけがないのを父は知っている。
何か不振な目でグロンディヌスを見つめるロイにグロンディヌスは続けた。
「この者がスパイの可能性は低い。日々の言動からもお前が一番よくわかっているはずだ。」
半ば横暴とも言えるこの持論だが俺とグロンディヌスが親子と言うのはよそからの人が多い隊の者は知らない人が多い。
シンも知らないだろう。
生まれて少しで、オメガだと分かった特殊な例だったので顔は世間には知らされてないし、息子としても公式に発表はしたことはない。
俺がオメガだと万が一バレたときの予防策でもあった。
グロンディヌスの第三王子がオメガ。かなりの恥だ。
「もういいだろう。行け。」
無茶苦茶な論理でグロンディヌスは話を終わらせた。
シンは不振な目で未だにグロンディヌスを見つめていた。
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