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もう終わる。
早い尋問が終わろうとしていた。
あとは謹慎の三日間を過ごすのみ。
でも久しぶりに会えたこの機会を何か生かせないだろうか_
「王よ。一つよろしいですか。」
口が動いていた。こんな数少ないチャンス、逃せない。少しでも気に入られなければ、足手まといのヤツになって左遷させられてしまう。
そうすると計画がパーだ。
藁にもすがる想いで俺は真っ直ぐグロンディヌスの顔を見て言った。
グロンディヌスはうっとおしそうに顔を上げた。
シンは何してんだという風にこちらを見ている。
「俺が襲撃を受けたボイズ山脈で会ったバロンコークの中大将ですが、」
俺は一呼吸置いて言った。
「グロンディヌス王の従兄弟でおられます、バアル様に非常に似ておられました。」
グロンディヌスの目が少しこちらを見た。
ペンが止まっている。こちらに耳を傾けているようだ。
「俺の事もなぜか、知っておられるようでした。確かな情報ではありませんが、一応耳にされた方が良いかと思いましたので言わせて頂きました。」
なぜか、の意味はわかるだろう。
グロンディヌスの反応から見ると、敵対関係だったのが決定的になったということか。
誰も知らない、俺が見つけた情報だ。
グロンディヌスが初めてこちらをしっかり見た。
「人違いだろう。早く退出しろ。」
グロンディヌスはそう言ってまたペンを持った。
「それは、ご無礼を。すみませんでした。失礼します。」
俺は敬礼をした後、シンの後を追って退出した。
これは、大きな成果だ。
グロンディヌスが出ていけと言ったとき初めて『俺』という存在を見ながら言った。
人に興味を見せないグロンディヌスが興味を持った。
それだけで俺にとって価値があることだった。
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