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大広間に着くと何百人だろうか、すごい人数が密集していた。
兵士から乳母やメイドまで。城中の人々が集結している。
正面には豪華な椅子に座ったグロンディヌス。
横には第一夫人がそれよりも少し飾りの少ない椅子に座っている。
髭の生えた威厳のある老人が、壇上に上がる。
「それでは長い戦い、ご苦労だった。これより、活躍した兵士には褒美を与える。」
年のわりには低く、野太い声だった。
「あれ、もしかして伝説の英雄のパルザナ?」
俺は昔読んだ英雄記の本を思い出して隣に立つシンに話しかけた。
「ああ、そうだ。」
シンは前を向きながらそっけなく答える。
やはりあの一件以来、少し壁があるように感じる。
「なあなあ、今回昇進して階級が上がるのは誰だろうな。やっぱり首をとったブラッグかな。」
シンの隣に立つ同じ隊長の仲間が顔をこちらに向けてひそひそ声で言った。
「そうだろうな。今回も昇進は一人かもな。」
シンが黙ったままなので俺が適当にあいずちをうつ。
昇進するのはめぼしい活躍をしたごくわずかな人間だ。
大将の首をとった、腕をそぎおとした。
そのレベルでないと昇進はまずあり得ない。
だから戦争の後の表彰式での昇進なんてほとんど飛び級昇進だ。
ほとんどの人間は地道に稽古などが評価されて少しずつ昇進するしかないのだ。
だから、驚いた。
「特別任務大将、ロイ。」
呼ばれるはずのない自分の名前が聞こえたときは。
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