無常の理《ことわり》

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無常の理《ことわり》

無常の(ことわり) さっきまで冬だったのに突然春になった。 一瞬、ほんの一瞬のことだった。 固く握っていた手をはなしただけ、 この軽いかんじは何? 私の姿は春の装いにかわっている。 ああ、川のせせらぎが見える。 流れながら美しく輝きを増してゆく。 川よ、純粋であれ。 川よ、清らかであれ。 雲よ、流れてゆけ。 どこまでもとんでゆけ。 昨日の私は今日の私ではない。 昨日の隣人も、今日の隣人ではなく、 同じ景色を、再び目にすることはできない。 春が春のままであってはならない。 時間を止めてはならない。 時代はめぐる。 考える私は変化変転をくりかえす。 私はすべてを与えられている。 すべては消えさることも、うけいれよう。 すべてが手の中をすりぬけてゆく。 手をはなすことを、 心から喜べるように……
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