32人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
真実なる知
真実なる知
生まれてはじめて果実というものを手にした。
なんという食べ物だろう!
私が口にしてきたものとは、まったく違っていた。
今までは、食べても食べても、
ただゴミの山がうず高くつみあがり、
手の中には何ものこらなかった。
「表現」という名の付いた皮をむくと、
甘い香りが、そこら中にただよった。
そして、
時代の風雪に耐えぬいた実を、
味わうことができた。
そこには命が宿っていた。
見よ! その証拠に、私の手の中には、
黄金色の種が握られている。
この種は食べられるごとに遺ってゆく。
やがて多くの実をつける、
大樹となってゆくために。
最初のコメントを投稿しよう!