真実なる知

1/1
32人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ

真実なる知

真実なる知 生まれてはじめて果実というものを手にした。 なんという食べ物だろう! 私が口にしてきたものとは、まったく違っていた。 今までは、食べても食べても、 ただゴミの山がうず高くつみあがり、 手の中には何ものこらなかった。 「表現」という名の付いた皮をむくと、 甘い香りが、そこら中にただよった。 そして、 時代の風雪に耐えぬいた実を、 味わうことができた。 そこには命が宿っていた。 見よ! その証拠に、私の手の中には、 黄金色の種が握られている。 この種は食べられるごとに(のこ)ってゆく。 やがて多くの実をつける、 大樹となってゆくために。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!