悪戯な指先

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悪戯な指先

 自動改札機に定期券をかざし、フラップドアが開く一瞬の間さえももどかしく乱暴にすり抜け、階段を駆け下りる。  電車はまだホームにいる。  いつもの七時四十三分の快速だ。  『一番線、間もなく扉が閉まります。ご注意ください』というアナウンスとともに発車を知らせるメロディー。  俺は脇目も振らず、階段から一番近い扉に向かって突進した。  車内は既にすし詰め状態だが、おしくらまんじゅうの要領でぐいぐいとムリヤリ背中から乗り込む。この電車に乗り損ねたらどうあがいても遅刻確定なので必死だ。  ぷしゅーっと音を立て、鼻先ぎりぎりのところ前髪をかすめて扉が閉まる。  間に合った……。  思わず安堵の溜め息が零れる。  俺の通う高校は、服装や髪型、遅刻・早退といった規則にやたら厳しい。遅刻一回につきレポート用紙三枚の反省文を書かされるなんて、今どきちょっと有り得ないんじゃないだろうか。  ほんの少し早起きすれば済む話だとわかっていても、いざ起きる時間になるとついつい惰眠を貪ってしまう。     
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