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最初のうちこそ悔しさと恥ずかしさで泣きそうになりながらも身を捩ってみたりできる限りの抵抗をしてみたけれど、その程度で怯んで諦めるようなヤツじゃなかった。
こんなところで痴漢行為に及ぶのだから相当ツラの皮が厚いのも当然といえば当然なのかもしれないが。
これがここ最近の日課になってしまっている。
何が楽しいのか知らないが、コイツは飽きることなく俺の尻を撫で回したり少し強く掴んでみたり、谷間を指で辿ったりしている。だが逆に言えばそれだけの事だ。その位なら何の実害もないし開き直ってしまえばどうってことはない。いい加減うんざりもするが、別に触られて減るもんじゃなし。
この電車が混んでいるのは次の駅までで、ほとんどの客は乗り換えの為にそこで降りてしまう。その先は同じ高校に通う学生たちくらいしか残らない閑散としたものだから痴漢行為も働けなくなる。つまり次の駅に着く七、八分の間だけ我慢すればいいのだ。
もぞもぞと動き始めた手を無視することにして、カバンを抱える腕にギュッと力を込め目を瞑った。
我慢だ、我慢。好きにやらせるさ。
その時、ガクンと電車が大きく揺れて、そのはずみで体が扉に強く押し付けられた。
「!」
今の揺れを利用したのかどさくさ紛れにいつのまにか手が前に回りこんできている。
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