十一の夏、初めてのおまつり

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 あやかしまつりの存在を知ったのは、私が十一歳の時だった。  真夏日となったその日、私は幼なじみの清一(せいいち)君と公園ではしゃぎ回っていた。  夢中で追いかけっこをしていたら、突然、清一君が倒れた。熱中症だった。救急車が呼ばれる大騒ぎになったが、命に別状はないということがわかり、私は安堵して帰路についた。  一人で帰る道は寂しかった。  誰かと一緒にいないと、不安で仕方がない。いつもそうだった。  本来なら同じ道を歩いているはずの相手がいない。  ……清一君が私より弱いなんて……。  遠くの方から笛のような音が聞こえてきて、それが余計に私を虚しくさせた。  アパートに帰ると、両親が待っていた。 「千沙(ちさ)ちゃん、おかえりなさい」  母が私を迎えてくれた。胸の中に飛び込むと、抱きしめて頭を撫でてくれる。 「千沙、これから出かけるよ。すぐに出られるかい?」  横から声をかけてきたのは父だった。半袖Tシャツにジーパンといういつもの格好。髪をワックスかなにかで整えていた。 「どこに行くの?」 「それは行ってのお楽しみ」  興味をそそる言い方だった。  私は泥で汚れた服を脱いで、白いワンピースに着替える。お気に入りの服だ。  父の運転する車に乗って、私達はアパートを出た。
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