十四の夏、二度目のお祭り

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 私は湖畔に立っていた。  すぐそばにステージが設営されている。壇上には誰も立っていない。始まっていないのか、もう終わったのか。  しばらくその場を動かないでいた。そのうちに演奏かなにかが終わったのか、私の周りはどんどん静かになっていった。喧噪はずいぶんと遠くにあるようだ。  私は湖畔から離れず歩き、屋台の多い場所に向かった。  テーブルとイスの用意された広場が左手にあった。以前は見つけられなかったものだ。二十席以上あったが、埋まっているのは半分ほど。  私は広場の奧を見て、目を細めた。  見間違いではない。広場の向こうに魂市が出ている。  両親が意味ありげに店主と話していた場所だ。店主のやる気のなさそうな声を思い出す。  ともかく行ってみよう。  広場を突っ切って、魂市の屋台の前に行く。 「ついにあやかしまつりもかぁ……」  途中で、テーブルについていた男達の会話が聞こえた。テンガロンハットの青年と、赤い外套を羽織った中年の男。 「詐欺師が紛れ込んでいたって?」 「そうらしい。偽物をさりげなく売りさばいてたって話でよぉ、おかげで食いもんすらおっかなくて買えねえ」 「捕まったのだろう?」 「ああ、ついさっきようやくな。俺も偶然居合わせて、奴が取り押さえられる現場を見てたんだ。カエンって野郎だった」 「捕まったなら一安心ではないか」 「だけどよぉ、そいつの流したブツが祭りのあちこちに紛れ込んでるってんだよ」 「いつ頃から始めていたのだろうな」 「んなこと俺に訊くんじゃねえ。けっこう前って聞いたが、けっこうってどれくらい前のことなんだよ馬鹿野郎」  青年は相当苛立っている様子だ。早く離れよう。
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