春の章 眼球コレクター

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放課後の教室。黒髪の美しい彼女は、自分の席で静かに読書をしていた。校則違反であるはずの長い黒髪を背中まで垂らしている姿は、他の同級生と比べ物にならないくらい大人びて、そして美しかった。 「あら、いたの?」 彼女は僕に気が付くと、ぱたんと本を閉じて微笑んだ。女神の微笑みだ。美しい。彼女以外に「美しい」と形容される人間がいるのだろうか。僕は迷わず彼女の前の席に座った。そこが、僕の席であるからだ。 「ねえ、ハル。最近このあたりで眼球コレクターが出てるの、知ってる?」 「ああ、あの、目をくりぬかれた死体の話?必ず右目がなくなってるって」 「そう。ねえ、なんで目をくりぬいたりするのかしら。本当にコレクションしているのかしら」 「だとしたら、冷蔵庫には眼球がたくさん並んでいるわけか。なかなかそれは、グロい画だね」 「ハル、私は真面目に訊いているのだけど」 「ああ、僕は至極真面目に聞いているつもりだけど」 彼女は明らかに機嫌を損ねたようで、小さな唇をきゅっとすぼませて自分のバッグからノートを取り出し、机の上に広げた。それは、ここ最近の眼球コレクターの仕業とされている事件が掲載された新聞の切り抜きだった。
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