春の章 眼球コレクター

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「私が気になるのもそこなのかしら」  翌日、やはり放課後、自然と昨日の続きのように眼球コレクターの話になった。僕はその雑誌と、昨日僕が推論したあの話を話してみた。すると、思案顔の彼女からの第一声がそれだった。 「被害者の死因の違い、か」 「何らかの事件の被害者、というのは、信憑性があっていいわね。素敵な推論だわ」 「素敵?的確、ではなく?」 「だって、本当にあっているかは、今のところ犯人しか知らないわけでしょ。的確、とは違うわね」 「ああ、まあ、そうだね」 「気のない返事ね。だからモテないのよ」 「僕はモテる必要性を感じていないよ」 「あら、私はこんなでも人気があるのよ」 確かに、ナツは男子生徒から人気がある。そして彼女の不思議なところは、そんなでいて女子生徒からも人気があるのだ。さっぱりとした彼女の性格が、女性を引き付けるのだろうか。以前、後輩の女子生徒に告白された、と報告されたときはさすがの僕も驚いた。 「それは十分承知しているよ」 「だからあなたは疎まれるのよ。こんな私と、こうして密に付き合っているのはハルだけだもの」 「そうなのかい?放課後以外は、女子たちと楽しく付き合ってるじゃないか」 「毎日変わっているでしょう?付き合っているグループが。順番なのよ。みんなと仲良くしてあげなくちゃいけないの。人気者だから」 「だからって僕が疎まれる、というのは腑に落ちないね」 「だってそうでしょ。だから私と一緒にいるとき以外はほとんど一人じゃない」 「僕は一人が好きなんだよ」 「でも、私とは一緒に過ごしてくれるのよね。ありがとう」 ありがとう、という言葉とは裏腹な平坦な声質。なんとありがたみを感じない、ありがとうだろうか。
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