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「そういえば、本屋で先輩に会ったって言ったわよね。眼帯の」
「ああ、あの先輩か」
「どんな人?綺麗?」
「眼帯に目がいって、容姿は見てないよ」
「ふうん。普通男なら、女をじっくり見るもんだけど」
「僕を普通の男として定義しているのかい、君は」
「ええ、男として生まれてきている以上は」
「なるほど。それは男として、というよりは、オスとして、という感じだね」
「……ふふ、言われてみると、たしかにそうね」
「君は優しいのか厳しいのか、時々わからなくなるよ」
「私は優しくて厳しいのよ」
論破されて黙り込む僕を見て嬉しそうに微笑むと、ナツは唐突に立ち上がった。
「ね、今から行きましょうよ、その本屋さん」
「え、なんで」
「その先輩に会えるかもしれないじゃない」
「なんで会いたいんだい」
「気になるの。だって、眼帯してたのよ」
「それにしたって……ただのものもらいかもしれないじゃないか」
「ものもらいじゃないかもしれないじゃない」
「昨日の今日だよ。いるかわからないよ」
「いいのよ、行きましょう」
細身で華奢な彼女にしては力強く、半ば引きずるように僕を立たせて教室を出た。
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