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テーブルの下でうずくまる海と、床に増えていく赤い染みを見てギョッとなった。
(ど、どうしよう)
すぐさま、ドタドタと母のスリッパ音がして、びくっとなる。
「結奈? また海君を」
洗濯物を抱えた母は流血する海を見て「きゃあ」と悲鳴を上げた。海の額から流れた血は、真っ白な肌を伝い、青紫色に変色した唇の端を赤く染めていた。
母は洗濯したてのタオルを海に押し付け、海と同じくらい青ざめた。
「大変だわ。病院」
「違うのお母さん。これはね」
キッと私を睨みつけた母が「病院行かなくちゃ」と、海を抱えて電話台へ向かった。
母に無視をされその場に取り残された私は、たまらなくなって家を飛び出したのだった。
セミがやけにうるさかった。
自分のせいで海がケガをした。
その事実より、それを義父に知られて嫌われることが何より恐ろしかった。
義父にまで嫌われてしまったら、私の居場所は世界中のどこにも無くなってしまう。そう思ったのだ。
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