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本当は、わかっていたのだ。
海に謝らなくっちゃと。
ずっと思っていたのだ。
優しくしてあげなくっちゃと。
だって、海はあたしの弟なんだから。
だけど……
「じゃあ、おばちゃんが魔法の呪文を教えてあげる」
いたずらっぽくウィンクをするおばちゃんのふくふく丸いほっぺたが、なんだか大福みたいだと思った。
私とおばちゃんは、ジリジリ暑い夕焼けの中で秘密の特訓をした。
「さあもう大丈夫。行っておいで」
ウィンクをして、肉厚の手で背中をぽんと押してくれる。
ほどよくあったかいおばちゃんの手のひらが、私にじんとした勇気を与えたのだった。
そうして私は、一歩ずつ歩み出した。
家に向かって。
海に向かって。
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