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家族は、一見すると幸せだった。
平日残業の多い義父は休日になると家族サービスを欠かさず、私たちが仲良く出かける姿を見て理想の一家と巷でも評判が立ったものだから母は鼻高々だった。
私も最初は弟の増えた家族に満足していた。
週末はみんなで動物園や水族館に行き、レストランでお子様ランチが頼めて、お土産におもちゃも買ってもらえて、まとまった休みは旅館やホテルに宿泊して、休日はいつもいつも忙しくて、それがとても楽しかった。
三人家族だった時もお義父さんは色々連れて行ってくれたけれど、それとは比べ物にならないくらい、毎週末がお祭りだった。
だから私は海が来てくれて本当に良かったと思った。
まだカタコトの日本語しか喋れない海が小さな弟みたいで、私は海の手を引いて「大丈夫だよ、あたしがいるからね」と言いながら、いい気になって動物園で動物の日本語名を教えたりした。海が私の言葉を真似して日本語を必死に覚える姿を見るにつけ「きょうだい」の言葉に舞い上がり、もっと色んなことを教えてあげたいと平日でも、どこに行くにも、海の手を握り「大丈夫だよ」と引っ張り回していた。
海は嫌な顔一つせず私につき従ってくれた。それが堪らず嬉しくて、だから私はいつも海と手をつないでいた。
そんな感じだったから、私と海の絆はどんどん深まっていった。
いい家族だと、本気で信じ切っていたのだ。
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