ドリンク（改訂版）

セミとハワイと碧い海

　観覧車でのできごとを境に疑心暗鬼の強まった私は、だんだんと海以外の家族を信じなくなっていった。

（お母さんは海とお義父さんに優しくて、反対にお義父さんは、私とお母さんに優しいんだ。二人共隠そうとしているけど自分の子供とよその子供を区別してるんだ）

　よくよく観察すると、二人は子供たちにわからないように妙な目配せを繰り返していた。

（こんなの、家族じゃないじゃん）

　大好きだったはずの優しい義父が、急にいやらしく感じられるようになった。
　円満な家庭を築くため、私の存在を家族の最下位に置いている母には強い嫌悪感を覚えていた。

　だから私は、家族の中で私と同じ境遇にあって、純粋に私を慕ってくれる優しい海にのめり込んでいったのだ。