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神社公園に夕方のハイカラチャイムが鳴り響く。海がケヤキからぴょんと飛び降りて、私の足元で手を差し伸べた。
「5時のチャイムだ。結奈、帰ろう」
差し出された海の手を握って、「もう?」とブツブツ言いながら仕方なく私も飛び降りる。
海の白い手はふわりと温かく、マシュマロみたいに柔らかい。そういえば、いつの間にか海から私に手を差し伸べることのほうが多くなった。
手をつないだ私たちは、母に怒られないように家路を急いだ。
(海は、帰りたくないって思わないのかな。海は家族が嫌いじゃないのかな)
海の温もりに安堵しながら、私はそんなことを考えていた。
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