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小学四年生の夏休みからまた年が明けて、私と海は小学5年生になっていた。
春のクラス替えでも私たちが同じクラスになれたのは、私と海の複雑な家庭環境を先生が考慮したからだったのかもしれない。
海と同じクラスになれた喜びは大きかったけれど、同時に、折に触れては母に比べられる毎日にうんざりした気分でもあった。
母のその頃の口癖は「それに引き換え」だ。
「海は6年生で習う漢字も読めるのに、それに引き換え結奈は3年生の漢字もうる覚えだなんて」
「海はいつでも算数が90点以上なのに、それに引き換え結奈は何? ああ、情けない」
学年が一つ上がる度に、私と海との学力の差が開いていく。
「海が頭良すぎるせいで、あたしが怒られるじゃない」
私の文句に「結奈は授業中に寝ちゃうからだよ」と海が切り替えした。まあ、図星だった。
差といえば、昨年まで私と大差なかった海の身長は、一年間で15cm以上も伸びて、私は海を見上げなければならなくなっていた。
小学5年生の夏休み明けにあった二学期最初の身体測定で、前回より1cmしか伸びていなかった私は、クラスで後ろから二番目に上り詰めた海をジロリと睨む。
「同じ食事してるのに外人ってずるい」
ふくれっ面をすると「僕は結奈の分も牛乳飲んでるから」と、海はいたずらっぽく笑った。
「給食がご飯の時だけだもん。ご飯に牛乳なんて和洋折衷もいいところよ。うぇ~」
私は両手を首に巻きつけて、気持ち悪いアピールをする。
当時、私たちのクラスではお残し禁止のルールがあった。私の舌はどう頑張ってみてもご飯と牛乳の組み合わせを許容できなかった。
それで週に二回、主食にご飯が出た時だけ、海がスープのおかわりをする途中に飲み干した海の牛乳パックと手をつけていない私のそれをこっそり交換してもらっていたのだ。
「僕は悪くないと思うけどな」
海が肩をすくめる。
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