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誰にでもにこやかで、何でもそつなくこなし、運動神経も抜群の海は、女子だけでなく男子にも大人気だったから、昼休みや放課後はドッヂボールやサッカーに誘う男子の間で取り合いになったりする。
そういう時、海はいつもみんなが納得する答えを導き出して、最終的にはドッヂボール派もサッカー派も取り込んでワイワイ仲良く遊んでしまう。
誰に対しても公平な海は、クラスの人気者、もっと言えば学年の人気者だった。
取り立てて良いところのない平凡で普通の私は、不公平すぎる神様を恨みながらも人気者の海と姉弟にしてくれたことに感謝したりもした。
あの頃の私はまだ「神様の言うとおり」的な、幼い神様信仰を持っていた。
季節は十月に移り、夕方の空は沢山のアカトンボが空の低いところを舞っていた。
私は放課後の委員会を終えて、校庭の端っこで友達とバスケットボールに熱中している海のところへと向かった。
「海~、終わったよ」
そう叫んだのと海の放ったボールがスパッと気持ちよくゴールに吸い込まれるのは同時で、ふう、と、肩で息を吐いた海が、チームメイトに手を合わせる。
「ごめん。今日はこれで」
「うわ~、また勝ち逃げかぁ」
「くっそー、次は負けねーぞ」
ゲームの途中で切り上げる海に「じゃあな~」と皆がハイタッチしていく。勝負事になると目の色を変える男子たちが、途中退場の海を爽やかに送り出す光景はいつ見ても異様だ。
もしかして、海は人の心を操る魔法使いなんじゃないだろうか。
外国の物語にはよく魔術とか魔法とか出てくるし、外人の血にはそういった特殊な成分が含まれているんじゃないかしら。
ブルーの瞳を持つ海なら、魔法の一つや二つ操れても不思議ではない気がする。
そんなことを考えているとふいに肩を叩かれ、何気なく振り向いた私はビクッと後ずさった。
そこに立っていたのが、相田君だったからだ。
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