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「おい、ブ……、またな、結奈」
私の頭を軽くポンと叩いて不自然に口角を上げた相田君は、すぐに口をいちもんじに結んで仲間の輪に戻っていった。そこで初めて、相田君も海たちとバスケットボールをしてたんだと知る。
「お待たせ……どうかした?」
校庭の脇に置いたランドセルを取りに行っていた海が心配そうに覗き込むので、私は首を傾げながら説明する。
「相田君が」
「智也が?」
「ブスって言わなかった。あと、髪も引っ張らなかった。普通、するのに」
ほんの一瞬、動きを止めた海がいきなり私の右手をギュッと握って歩き出す。
「え? 何?」
びっくりして海を見上げる。全身運動で血行が良くなりバラ色になった唇をキュッと結んで、海は正門をまっすぐ見据えている。ちょっと怒っているようにも見えたけれど、海が怒ったところなんて見たことのなかった私はそれが怒っているのかどうなのか、わからなかった。
「海? どうしたの?」
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