アプローチ

8/8
前へ
/354ページ
次へ
「お……」 『おばちゃん』と飛び出そうになった言葉を飲み込み、ぴょこんとお辞儀を返して私はレンガ道を歩き始めることにした。  これが世に言う、他人の空似というやつだろうか。  彼女はあの人にそっくりなのだ。  昔、住んでいた家の近所で小さな駄菓子屋を営んでいたおばちゃん。彼女も小太りでふくふくと大福みたいに笑う人だった。  おばちゃんは、海(カイ)と私の心を近づけてくれた人だった。  そう考えた瞬間、閉じ込めていたはずの心の箱がかちゃりと開き、海との初めての出会いが勢いよく飛び出した。
/354ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加