同居人はもっふもふ

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 注文した覚えの無いぬいぐるみが届いた。そんな問い合わせを通販会社に送ると、すぐに返事が来た。  曰く、会員への優待特典らしい。返品も可能だが、便利なので使ってみてほしい。そんな答えだった。  そんなことを言われても、モノはウサギのぬいぐるみ。使うなんて意味がわからない。  首を傾げながらぬいぐるみへ視線を戻すと、つぶらな瞳と目が合った。  くりくりとした愛らしい瞳。その下にある鼻が、ひくひくと動く。 「う、動いた!?」  リアル志向にも程がある。混乱していると動きは口にまで伝染し、小さな口がパカッと開いた。 「ご利用ありがとうございます!」 「喋った!?」  響き渡る甲高い声に、思わず目を見開いて叫ぶ。  近所迷惑だと気づいて慌てて口を噤むものの、驚きが収まってくれるわけではない。  私の動揺をよそに、ウサギは梱包材から抜け出し、キョロキョロと辺りを見回した。  こちらに気づいたように四つ足で駆け寄ってくる。私の前でピタリと止まると、再び口を開 いた。 「わたくし、ウサ一号と申します! 会員様の生活をサポートするため、この度派遣されて参りました! よろしくおねがいします!」  うさいちごう。そんな、名乗られても。  唖然としている私に向かい、ウサギはペコリと一礼した。
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