世界で一番美味しいモノ(微ホラー注意です)

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世界で一番美味しいモノ(微ホラー注意です)

「まずい!!」 がしゃん。 大きな音をたてた彼女は不満そうに シェフを睨む。 『あ~ごめん。失敗だったかー』 シェフ、彼は両手を合わせて謝罪をのべた。 「まったく!料理もまともに作れないなんて!作り手なんかより、素材にでも向いてるんじゃない?」 彼女は彼をストレスの捌け口にしている。 今日の料理は彼が初めて作った料理ではなく、彼女に作った18回目の料理である。 日々努力をし、試作を繰り返し、満足いくまで作り直したのだ。 だが、彼女はいつもまずいと一言。 彼はいつもこう言う。 「ごめん。次は美味しく作るから」 彼女は見向きもせず、彼を残してその場から去って行った。 次の日。 彼は弾むように料理を机に並べ、一輪の薔薇を真ん中に置いた。飲み物も薔薇とお揃いの真っ赤なシャンパンにした。 彼は彼女を連れてきて一言。 「君のアドバイスを取り入れた料理を作ったんだ。今日は記念品になるよ。君が美味しいと言ってくれる日」 屈託のない笑顔を彼は彼女に向けた。 「ほら、あーん」 彼女の口元に料理を運ぶ。 「あれ?お腹空いてないの?」 彼女は口を閉ざしたままだ。 がたん。 「大丈夫!?」 彼女は椅子から転んでしまった。 すぐさま彼は抱き抱え、彼女を椅子に座らせた。 彼女は微かに望みを口にした。 『・・・して』 彼は困った顔をして彼女を抱き締め、耳元で囁いた。 「君が美味しいと言ってくれるまで、料理を作るよ。愛しているよ」
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