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熊が目の前の鹿に気を取られている間に彼は後ろ歩きを続けて距離を稼ぐ。自分の不運を呪いながら、彼はその場から逃げる準備を整える。しかし彼は熊の出自が気になってしまった。彼が鹿を撃った際には熊の存在を確認できなかった。となると熊は発砲音に引き寄せられたに違いなく、銃声を聞いてその元に向かったらエサを得られたという経験は学習されるだろう。
辺りの猟場には彼だけではなく近くの集落の人間や部外者も狩りに来る。味を占めた穴持たずは他の猟師に危害を加えかねないだろう。熊に学習させてしまった責任を彼は感じた。ポーチに手を入れて、クリップで4発が束になった実包を確かめる。
意を決して彼は銃に手をかけた。4発の束を機関部から押し込めるとボルトを戻す。彼がボルトハンドルを掴んだ瞬間から熊は意識を彼に向けていた。
素早く銃を構えると彼は引き金を引いた。結果を確認するまでもなく彼はボルトを後前させて次弾を装填する。ボルトアクション後に自動的に安全装置が作動する機能を失念していた彼は2発目を撃てなかった。
熊の巨体に追突された彼の体は地面を離れた。1秒と経たずに彼は地面を転げたが不思議と彼は痛みを感じていなかった。意地でも手放さなかった銃のセーフティを解除して念願の2発目を熊に叩き込む。しかし効いている様子はなかった。
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