ねえ。

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「お母さんお母さん! このおもちゃのお人形さん買ってー!」 4歳くらいの頃、そう言って買ってもらった、 人型の人形。 男の子の形をしていて、無表情。 電池を入れると、カタカタとゆっくりと歩くもの だった。日常的におもちゃなんて欲しがらない私が 初めてねだったおもちゃだった。 お店は古くて、骨董品が並んでいた。 その中でひとつぽつんとあったその人形を買った。 どの場所からでも目が合う、なんとも不思議な人形だった。 そんな私ももう10歳になった。 学校ではMiiUっていうゲームが流行っている。 昨日が丁度誕生日で、買ってもらった。 家に帰って、ランドセルを投げる。 ゲーム機の電源を入れようとしたけど… 電池が無い。 お父さんの書斎にも、物置の工具入れにも入ってない。 物置のドアを閉めようとした瞬間、 人形と目が合った。 そっと持ち上げてからホコリをはらった。 後ろには電池入れ。 電池入れの蓋を開けると、電池が二本。 「ピッタリじゃん!!」 思わず叫んでから、電池を取り出す。 人形は物置に投げ込んで乱暴にドアを閉めた。 ゲームは楽しすぎた。 夕食の時間まであっという間。 「夕食だよー」 って食卓の方から聞こえた後に、 「この人形出してきたのー?」 って質問される。 食卓に走ってから、ギョッとする。 机の上には物置に投げ込んだはずの人形が 転がっていた。私は、 「知らない知らない。」 と答える。 「えー。怖いこと言うわね。エイプリルフールはまだ先よー。食べたら閉まってらっしゃい。」 と言われた。人形を捌けて夕食を食べた。 食べ終わってからお風呂に入って、 人形を食卓に取りに行く。 あれ、無い。 「お母さぁーん!人形どこやったー?」 と聞くと、 「あれ?閉まったんじゃないの? 食器洗い終わったら無くなってたわよ。」 と。 えーー。と叫びながら自分の部屋に帰る。 でもその叫びは倍の大きさになった。 机の上には人形が立っていたのだ。 「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 混乱状態で人形を掴むと、窓の外に放り投げた。 「今日は早く寝る。」 そう言ってから布団に潜った。 夜中。 トイレ行きたい…と思って顔を上げると、 人形が布団の横に立っていた。 体が硬直する。声も出ない。 無表情なのに、少しだけ微笑んでいる。 そして、 「ねえ。」
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