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虎の予言したとおり、烈しい風雨は続き、そこへ一泊して村へと帰ることになった。
翌日の昼になると、昨日までの天気がうそのように空が澄んでいる。
虎は歩く。ひたすら軽快に。
その歩む速度はかなりのものだ。
しかも休息をほとんど必要としない。
一方のノギトは空とはいえ、荷車を押しつつの移動なので、追いつくのは容易ではなかった。
それに気付いた虎は、途中から歩調を落とすようになった。
そして――――。
街道の途中で、ふたりは大声をきいた。
女性のものだ。
反射的に駆け出そうとしたノギトの肩を、虎が掴んだ。
「まず荷車を隠して、そっとついてこい――」
「ちょっと、やめてよ! 迷惑だと言ってるじゃない」
「いいから来い女! 逃げられると思うな」
雨よけのマント、チュニックを着た女性が、五人の男どもに囲まれている。
五人の姿はきのう出現した、野盗たちの風体とかわらない。
おそらく、虎が斬った三人の仲間なのだろう。
じりじりと野盗どもは、包囲の輪を縮める。
少女は、両手で短弓をかまえていた。
「近寄らないで、撃つわよ!」
「まちがいない、あの声はわしの娘、セシリアだ」
ノギトがうめいた。
セシリアはおそらく、彼を迎えに来てくれたのだ。
その途中、運わるく仲間を探しに来た野盗と、鉢合わせしてしまったのだろう。
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