第二章

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 野盗は相手が女と知れば見境がない。  さらって犯すこと以外は頭にない連中だ。  特にセシリアはまずい。狙われているのも知っているはずなのに。  彼女のやさしさが裏目に出たのだ。    農夫は舌打ちしたい気持ちでいっぱいだった。    セシリアは、せいいっぱいの抵抗を示すように、周囲の男たちの頭に短弓を向け威嚇している。  ぶんぶんと頭をふって、視界を遮るマントの頭のフード部分をはらりと落とす。    さらりと流れる、肩の辺りで切り揃えられた金髪。  澄み渡った空のような碧眼。  歳は今年で十八になる。  目鼻立ちの整った、美しい娘だった。 「おいおい、その武器は中距離で威力を発揮するやつだろ」 「ひそんでる俺たちに気付かなかった時点で、おまえの負けなんだよ」 「あっ」 野盗がひょいと矢のシャフトを掴んだ。これでは射ることもできない。 「ま、まずい・・・・」 農夫が樹木の隙間から駆け出そうとしたのを、虎が制止した。 彼の指示で、ふたりは街道をはずれ、木々の隙間から様子をうかがっていたのだ。 「やめておけ。おまえさんが行った処で、拾った命を無駄に捨てるだけだ」 「し、しかし」 「こんなときの用心棒だろう」 男は気乗りしなさそうな声で言った。敵の数は以前より多い。 「ひと働きしてくる。しかし、面倒くさいな」
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