3人が本棚に入れています
本棚に追加
野盗は相手が女と知れば見境がない。
さらって犯すこと以外は頭にない連中だ。
特にセシリアはまずい。狙われているのも知っているはずなのに。
彼女のやさしさが裏目に出たのだ。
農夫は舌打ちしたい気持ちでいっぱいだった。
セシリアは、せいいっぱいの抵抗を示すように、周囲の男たちの頭に短弓を向け威嚇している。
ぶんぶんと頭をふって、視界を遮るマントの頭のフード部分をはらりと落とす。
さらりと流れる、肩の辺りで切り揃えられた金髪。
澄み渡った空のような碧眼。
歳は今年で十八になる。
目鼻立ちの整った、美しい娘だった。
「おいおい、その武器は中距離で威力を発揮するやつだろ」
「ひそんでる俺たちに気付かなかった時点で、おまえの負けなんだよ」
「あっ」
野盗がひょいと矢のシャフトを掴んだ。これでは射ることもできない。
「ま、まずい・・・・」
農夫が樹木の隙間から駆け出そうとしたのを、虎が制止した。
彼の指示で、ふたりは街道をはずれ、木々の隙間から様子をうかがっていたのだ。
「やめておけ。おまえさんが行った処で、拾った命を無駄に捨てるだけだ」
「し、しかし」
「こんなときの用心棒だろう」
男は気乗りしなさそうな声で言った。敵の数は以前より多い。
「ひと働きしてくる。しかし、面倒くさいな」
最初のコメントを投稿しよう!