3人が本棚に入れています
本棚に追加
虎はぶつくさと呟きながら辺りを物色し、ひょいひょいとふところに何かを収めた。
そして、まるで散歩にでも出かけるような足取りで、すたすたと野盗の集団に近寄っていく。
わざとらしく足音を立てたので、野盗のほうも虎に気づいた。
見るからに剣士である虎を、警戒するような顔つきで睨みつける。
「なんだ、この野郎は?」
「おまえらが探してる連中な、見つからないぞ」
「な、なんだと!?」
「そいつらは、そのあたりで腐ってるはずだ」
「なにい、ふざけるな!!」
野盗たちはばらばらと得物を抜いた。
蛮刀を抜くもの、短剣を両手に構えるもの、手槍を持っているものもいる。
虎はふところに手を入れ、ひゅんと手首を閃かせた。
四人の野盗たちの影に隠れ、ひとりの男が呪文の詠唱に入っていた。
「アザ=シロド=メカラ=ラムロ・・・ぼっがあッ!!」
その男の口許に、めきりと尖った石がめり込んだ。
野盗たちの間隙をぬい、虎が先程ひろった石ころを、親指で撃ったのだ。
投石器かなにかを用いたような、尋常ではない速度だった。
「どの魔法使いも、詠唱中は無防備だな」
魔法使いとおぼしき野盗は、顔面から血を流してのた打ち回っている。
前歯が何本か折れたようだった。
虎は連投する。
次々と野盗どもの顔面に、飛礫が炸裂する。
「女、この隙に逃げろ」
虎はぼそっと告げた。
呆然と事態を見守っていたセシリアは、その言葉でハッと我に返ったようだった。あわてて駆けだした。
最初のコメントを投稿しよう!