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護衛を雇うべきだったか、とも思うが、護衛が道中、豹変して金を奪うという事態も日常茶飯事なのである。
難しい判断だった。
腰には護身用に棍棒をぶらさげている。日ごろの重労働で腕力には自信があった。
「できれば、そういう事態は避けたいものだが・・・・」
溜息をひとつついたと同時だった。ずん、と車輪が重くなった。
「むむ、車輪が石にでも引っかかったか」
やれやれ、と背後をふりかえると、いつのまにか荷車の上にひとりの男が座っている。
「つれねえな、俺を運んでくれねえのかい?」
いや、ひとりではない、ひっと距離をとった農夫の背後に、木陰から現れたふたりの男が道をふさいでいた。
三人ともぼさぼさの長髪に無精髭。ろくに手入れされていない、ぼろのレザージャーキンを着ている。
自己紹介されなくても何者か察しはついた。
「な、なんだ、わしになんの用だ!!」
農夫は腰に差した棍棒を片手に持つと、精一杯のどなり声をあげて虚勢を張った。
しかし膝が小刻みに震えているため、本人が期待したほどの効果はなかった。
「あー」
相手はそれに対し、いかにも気だるげな調子で言った。
「金を置いてくか、命を置いてくか、好きな方を選びな」
どんっと男は荷台の上に蛮刀を突き刺した。
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