第一章

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「じ、事故だと?」 「見ただろう? この男が勝手に俺に斬られたがって倒れてきたんだ。俺は殺すつもりなんて微塵もなかったのに。自殺願望が強かったんだろう。可哀想なやつさ」 「なにをぬかす。ふざけるのも大概にしやがれ!」 「なめくさりやがって、死にくされ!」 激高した野盗ふたりは、いっせいに左右から襲いかかった。 「おいおい、事故だと言ってるのに―――」  男のマントが弧を描いた。  一瞬、野盗たちの視界が遮られる。  勢いそのままにふりおろされたふたつの蛮刀は、虚しく空を切った。 「な、何が起こった?」 「やつはどこに消えた」   男たちの背後から、ひと筋の銀光が宙にきらめいた。  どん、とふたつの生首が音を立てて落ちた。  その顔に驚愕の表情を刻んだまま。  と同時に、ゆっくりと二つの野盗の身体が、大地に吸い寄せられるようにどうと倒れた。  キモノの男は、ひゅひゅんと空中で剣の血しぶきを払った。  そのまま流れるような動作で、背中の鞘にその長大な刀身を収めた。  身をかがめ、転がっている自らの手荷物を拾う。さらに転がっている農夫の革袋も拾い、当然のような顔つきで、それをふところにねじこもうとした。
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