第一章

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「わかった、村長とかけあってみよう」 「で、ここからおまえさんの村までどれくらいだ」 「今日じゅうにはなんとか・・・」 「一泊して、翌日の昼というところか」  ちん、と男の背から音がしたような気がした。  と同時に、どさりと音がして、葉をぎっしり茂らせた木の枝が落ちてきた。   斬ったのだ。農夫が知覚できぬうちに。  男はその葉の生い茂った枝を農夫に投げわたした。 「急いだ方がいいと思うぞ」   農夫は、ぽかんとした顔で枝を手に取った。  男はマントについたフードを頭に被っている。 それが男の気遣いだったと気付いたのは、手遅れになってからだった。 ――――たちまち、頭上に大粒の雨が降ってきたのだ。
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