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「起きたか?」
「へっ、ぅぁ、はい!」
問いかけてくる顔はいつも通りポーカーフェイスだが、声の大きさ的に今の独り言は聞こえていた気がする。
「ん、はよ。とりあえず風呂入れてるから。その前に水飲めよ」
「う、ん。おはよ、ありがと…」
減ってはないけど蓋の開けられたペットボトルと、さり気なくTシャツを渡される。
そう言えば毛布かぶってるけど服着てなかった…
今更ながらに羞恥心で顔が赤くなる。
背中を向けてそそくさとそのTシャツに袖を通す。
その間も背後の気配はそのままなのが余計に恥ずかしい。
このまま振り返らないのも変なので、顔だけでもと後ろに向けると。ものすごい至近距離に彼の顔があった。
ビックリする間もなく肩に手を置かれひっくり返される。そのまま押し倒されたかと思うと、キスされた。
「んっ…」
ちゅっ、と軽いリップ音を立てて離れていったが、心做しか至近距離で見た彼の顔も赤い気がする。
その顔をマジマジと見る間もなく彼は立ち上がり、背を向けた。
「俺も好き…」
小さくそう呟いたかと思うと、足早に部屋を出ていってしまった。
さっきの比じゃないくらいに顔が熱い。
「………」
なんなんだ。キスなんて何回もしてる。昨日だって散々した。
それなのに、こんな触れるだけのキスに…。今のは反則じゃないのか。
「くっそ、卑怯だ…」
かっこいいのに可愛いとかギャップ萌えかよ最高だわ。
あー!もー!
とりあえず誰もいないけど、毛布にくるまって赤くなった顔を隠す。
再び香った彼の匂いにくらりとした。
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