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「痛てぇよ...」
ヒリヒリと痛む背中を押さえて顔を顰めると、銀汰は白い歯を見せて豪快にニカッと笑った。
「わりぃわりぃ!でも元気出ただろ?」
「出ないから。お前朝からテンション高すぎじゃないか?」
「朝こそ元気に行かねぇとな!お前も過去のことばっか気にしてうじうじしてたらいっつまでも前に進めんままだぞ?」
何気なく放たれたであろうその言葉は、僕の心に深々と突き刺さった。
過去のことは気にするな。もう終わったことなんだ。君は何も悪くないんだから、未来に向かって進みなさい。
小説やらテレビで日夜垂れ流されている薄っぺらい言葉。それを聞く度に僕は思った。
そんなこと分かってるんだ、と。
今僕がどんなに気にしようが泣き喚こうが、もっと言えば命を絶とうが、過去は変わらない。馬鹿ではないからそんなことぐらい分かっている。
でも、どう頑張ろうとその過去を忘れられないから......結局そこに囚われる。薄っぺらい言葉に容易く救われるほど陳腐で簡単なものじゃない。
唇を噛み締めて黙り込んだ僕に、困ったように眉を寄せて銀汰が言った。
「何か俺まずいこと言ったか?」
「いや、別に。...じゃあな、僕もう行かなきゃ」
「おう、ばーいばーい!」
銀汰はまた歯を光らせながら、両腕をブンブン振って叫ぶ。
...本当に毎日朝っぱらから元気だよな、コイツ。
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