奇妙な普通

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奇妙な普通

「ねえマサフミ」 「ん?」 冷蔵庫から何やら取り出しているマサフミが振り向く。 「普通ってなんだろうねえ」 ガラガラ、パタン、と、野菜室の引き出しが閉められる音がする。 「見たまえワトソン君」 私は眉をひそめて、肩までもぐりこんでいたこたつから上半身だけをもそもそと外に出し、「ぐいーん」と変な声をあげながら腹筋に力を入れ、背中を弓なりにして起き上がった。 見ると、マサフミがメガネをくい、と持ち上げるように両目の間に中指をあて、取り出したりんごを突き出すようにして、私の方に向けていた。 そして、キラリと目を光らせて、マサフミはその唇を開く。 「りんごは赤い」 「ふむ」 「普通だとは思わないか!?」 「はっ」 沈黙。 「……思う」 ちなみに、マサフミはメガネをかけていない。
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