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次は、自分とTによる
“悲しみはぶっとばせ”
二人でアイコンタクトをして、
同時に3連符のギターコードをかき鳴らす。
二人でユニゾンで歌った。
式に出席していた人達のことは見えていなかったけれど、
もし、ビートルズ好きな人がいたら、どうしてこの選曲なんだろう?と思ったはずだ。
そう思われるのは、自分もTもわかっていた。
高校時代の二人で歌っている感覚がよみがえる。
あの狭い部屋の風景、
蝉の声が頭の中でリンクする。
もしも今、この歌を聴いたら、またあの近所の犬は吠えるだろうか・・・?
そう考えたら懐かしさで何故か笑いが込み上げてきた、
笑いを胸の内に押さえ込みながら歌うと、幸いにも気が紛れ、緊張せずに歌えた。
全ての演奏が終わり、
三人でお辞儀をした。
歌い終わっても、新郎・新婦はバタバタと次のスケジュールがあったため、Tとはその日、結局ほとんど会話はしていない。
おそらく、普通の生活に戻っても、Tとは当分会わないだろう。
でも、Tの結婚式という意味あいを除いたとしても、自分にとって特別な日になったし、一生忘れないと思う。
またいつか、ビートルズの曲を二人で演奏する時が来るのだろうか?
それもわからない。
ただ、もし、そんな日が来たとしたら、
自分は間違いなく、
「“悲しみをぶっとばせ”はどう?」
と聞く。
もちろん、Tは
「“悲しみは”が正しいはずだけど」
と反論する。
この曲は、自分とTの二人だけの合言葉であり、永遠の友情の証なのだ。
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