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「山下、肉が駄目なら冷麺でも頼むか?」
「……ううん、だ、だぃ……」
「はっ? ごめん、何を言っているかわからん」
おしとやかというか、おとなしいというか……毎日のように顔を合わせているにも関わらず、山下とは連絡事項以外まともに話をしたことがない。
俺が声をかけるとやたらとビクつくし、声も小さくボソボソと喋るので、聞こえ辛いことこの上なかった。こんな調子だから、やはり俺には脈がないのだと、既に諦めモードに突入している。
それから程なくして食事会が終了し、ベン先輩は悦子先輩をお持ち帰りした。そして、俺はがっくりと肩を落とした山下を「スカボローフェア」へと連れて行った。
「肉が苦手なのに、焼肉店なんかについて来るから。腹、減っているんだろ?」
俺が声をかけると、まるでカツアゲされた学生のように山下は怯えて頷いた。
「ツナサンドだったら、食べられるだろう?」
「は、はい」
閉店時間をとっくに過ぎたカフェの店内で、俺は山下弥生のためにツナサンドとコーヒーを作った。勝手知ったるなんとやらで、小腹がすいた時はいつも勝手にここで何か作って食べているのだ。
「単刀直入に聞いて失礼かも知らないけど、山下はどうして俺たちについて来たんだ?」
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