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大学入学からの付き合いだし、二人きりなんだから、ここは本音で語り合おうと決めていた。返事はなかったが、見る見るうちに山下の顔が赤くなっていくのがわかった。そして、その表情から全てが読み取れた。
「前から思っていたんだけど、やっぱり……その、誰にも言わないから教えてくれ。お前はベン先輩のことが好きなんだろう?」
食えもしない焼き肉に付き合うくらいだ、好きな男目当てでなければ他に何のメリットがあるのだろうか? やっぱり山下はベン先輩が好きなのだ。
「そ、そんなことは……私は……私は!」
いきなり山下が立ち上がり大声で叫んだ。まともに会話が成立したことなどなかったから、彼女がこんな風に大声を出すこと自体が新鮮だった。
「山下、大きな声が出せるじゃないか。いつも何を言っているのかわかんない、ボソボソとした声しか聞いたことがないから驚いたよ」
真っ赤に染まった顔を下に向けて、山下は打ち明けた。
「ひ、人見知りが激しくて、話下手だし……それに、それに……あら? 今、お店でバイトを募集しているの?」
カウンターに置いてあったバイト募集の張り紙を見つけると、急に素っ頓狂な声を上げた。
「あぁ、昼間のバイトさんが急に辞めちゃってさ。土日だけでも入れる人、誰かいないかな?」
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