ミセスロビンソンと迷える子羊たち

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「もちろん、この店のバイトですよね?」 「そうだよ。地元農家から仕入れた無農薬野菜を使った「スカボローフェア」は、各アレルギー対応もOKのオーガニックカフェです。赤ん坊の頃、俺がひどいアトピーで、母親が治療のためにこのカフェを始めたんだ。ちなみに人気メニューは米粉のパンケーキだね」 「もしかして、小田君は農芸化学科を選んだ理由はそれなのね」 「あぁ、俺と同じようにアトピーやアレルギーに悩んでいる人たちのために、何か少しでも役に立ちたいからね」 「立派な志を持っていて、凄いわぁ」 「それで、山下はどうして?」 「わ、私は理科の実験とか、観察が好きで……バイオテクノロジーっていう響きにやられちゃったって感じかしら?」  可愛い外見と裏腹に、山下はオタク気質を持ち合わせているらしい。しかし、既に大学三年も終わりに近づいているというのに、今頃になって大学入学の志望動機を教え合うなんて、とことん山下は俺に興味がないらしい。  ダメもとで必死に自己アピールをしようとしたところに、とんだお邪魔虫が割り込んできた。 「義実、帰っていたの? あら、お客さん? って、え? もしかして、彼女?」  今夜はNPOの会合で出かけているはずの母ちゃんが突如として現れたのだ。
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